日野市『ブックセンターいとう』にて
八王子の民俗(佐藤広 揺籃社)定価1500円 650円
三多摩物語(宮沢光顕 有峰社)定価1000円 400円
東京の中の江戸(加太こうじ 立風書房)定価1550円 650円
江戸繁盛記(佐藤雅美 実業之日本社)定価1700円 750円
おかしな男 渥美清(小林信彦 新潮文庫)定価667円 300円
食生活の歴史(瀬川清子 講談社学術文庫)定価1000円 500円
2005年10月アーカイブ
神保町 湘南堂で
散歩の達人「川越」300円と「八王子」300円の2冊。
神保町 とかち書房で
『昆虫学五十年』(岩田久二雄 中公新書 定価360円)300円
『新釣百科』(佐藤垢石、松崎明治 大泉書店 定価480円)600円
神保町 三省堂
『サバがトロより高くなる日』(井田徹治 講談社現代新書 740円)
『貝のミラクル』(奥谷喬司 東海大学出版局 2500円)
もっともっとたくさん出て欲しいのが地方での図鑑である。これがなかなかいいものが見つからない。中にあって海岸動物を集めて丁寧な解説までつけたものが本書である。茨城というと北と南の分かれ目にあって、海岸で見られる生物も膨大だ。そのなかで海藻に関しては非常に優れた解説や写真が掲載されており、これだけでも買う価値あり。脊索動物や貝など、取り上げた生物の選択もいい。ただ魚類はできれば外してもらいたかった。
茨城新聞社 2060円 1985年
今、作家は数あれど吉川潮は、ぼうずコンニャクにとっての王様、これ以上ない存在だ。まったく空振りがない。読むのが惜しいくらいに面白い。今回も神保町三省堂で見つけた時はうれしかったね。柳家三亀松という名もしらぬ芸人ではあれど、吉川潮が取り上げたというだけで音曲師の芸を見てみたいと思ったぐらいだ。柳家三亀松は昭和40年代になくなり、その芸の最盛期は昭和30年代には終了していた。ということで一度もテレビなどで見ていないのだけれど、昭和を代表する芸人の一人である。今では「さのさ」や「都々逸」、「漫談」などは忘れ去られようとしている。だが戦前戦後を通じて音曲師は間違いなく多大な人気を博していたのだ。なかでも柳家三亀松はその最たるもの。木場で生まれた生粋の江戸子が大阪吉本のカンバン芸人となり、また戦後も人気は衰えない。その華やかで奇矯な人生の涙有り、感動有りの面白いこと。
新潮文庫 629円 2003年
縄文時代のことを考え始めたのは東京湾でハイガイの貝殻をひろったのがきっかけだ。また武蔵野の多摩川やその周辺でもなまなましい貝の化石(まだ化石といえるかどうか)が多数でてきて、BC4000年をピークとする縄文海進(温暖化で海面が上昇する)のことを思うのだ。そんな縄文時代を貝塚や遺跡の出土品、また多数の論文から水産魚貝類の分野で解説推論してくれているのが本書である。東京湾千葉県側にある巨大な貝塚からの大量のカキ殻、ハマグリの貝殻。なぜ単一種がまとまってあるのか? ここから推測する縄文期の地域交流。またなぜか千葉県だけに出土する大量のイボキサゴに関する記述もなかなか踏み込んでいるように思える。青森の三内丸山遺跡からみる魚食、また現在の陸奥湾に棲息する魚貝類との種の比較も斬新で面白い。魚貝類の関心があるなら必読書のひとつ。
角川選書 1500円 2001年
二葉亭四迷というと言文一致ということで有名でも、何を書いた人といった曖昧さがある。「浮雲」という代表作が思い浮かばないし、読もうとも思わないのだ。その二葉亭四迷がロシアに渡る年、明治四十一年。そのやや喜劇的ですらある彼の人生はこのロシアへの、旅の帰途で閉じる。若くして「浮雲」という我が国初の言文一致体小説で注目された二葉亭・長谷川辰之助が、役人となり、また新聞記者となりながらも、その強い自我を捨てようとはしない。また、翻訳、評論を発表する折々に明治期の文学界に大きな波紋を投げかける。これに呼応するかのごとく創作活動にのめり込む国木田独歩、田山花袋。また夏目漱石、樋口一葉など明治期の文学者の人生模様が濃厚に盛り込まれている。この本、電車の中で読まない方がいいかも知れない。目的の駅を乗り過ごしかねないからだ。
文春文庫 590円 2003年
タイトルを見てすぐに買ってしまった。とても魅力的な本である。沈性卵、浮性卵などマダラ、スケトウダラで違いがあることや、食感にそれぞれ違うんだなと漠然と考えてはいたが、本書をして頭の中の整理がついた気分である。
本書はまず食品としての卵から章が始まる。これが非常にわかりやすい。例えば、「たらこ」はタラの子ではなくスケトウダラの子というのは当たり前でも浮性卵の方が軟らかく、これが食味に影響していること。こんな出だしは門外漢にはありがたい。そして卵の表面の顕微鏡画像から見えてくる複雑な模様、これが時に科の段階で共通したり、また科も目も関連のない魚で似通っていたり、これが生息域や産卵方法で収斂したものである加工性も面白いし、卵を考える上で多くのヒントを与えてくれる。
ちょっと残念なことはページ数が少ないことだ。出来たら上下2巻にして各章をもう少し掘り下げてもらいたかった。
成山堂 ベルソーブックス017 1600円
始めに述べて置くが新刊本屋で本書を手にしたときまったく購入したいと思わなかった。これは定価2200円に値しないと思ったためである。それを古本屋(神保町 大雲堂)で1200円で売っていて、資料として持っていてもいいだろうと敢えて買ったのだ。ちなみに大雲堂はこの分野のものも専門に扱う店で、分野の本の値段は言うなれば評価だと考えていい。現に新刊本で並んでいるものが半額なのだ。まず、この本の問題点は著者にあるのか編集者にあるのか疑問である、そこのところをふまえて読んで欲しい。
まずいけないのが情報源が原文ではなく事典や小説からのものを平気で使っている。また情報源があまりに少ない。少ないと言うことでサバというものを著者自体が把握していないように思えるのだ。例えばサバには2種類いる。マサバとゴマサバであるが、この2種は鮮魚流通でも加工業でも大きな違いを持っている。またサバ属の幼魚や小さなものもそれぞれ取り扱いが違うのである。そんなことを述べてからすすめるべき漁や食べ方の話が、これがないために、また調べたデータ量が少ないことも相まって散漫で不正確なのだ。このことは信仰や文芸、流通など総てに共通する。また同じことの繰り返しが多いのも編集方法として不思議だ。
サバに関する資料として持って置いても悪くはないが、その資料の信頼性は薄い。サバに関する本は少ないので、もっとしっかりした編集と資料集めをして欲しかった本。
雄山閣 2200円 2002年
鵜飼と言えば長良川、その観光的要素が目についてあまり調べてみる気にもならなかった。それが神保町の古本屋で100円本の中から「鵜飼」の文字を見つけてつい買ってしまったのが、これである。これがなかなか面白い、中国、インド、エジプトにも起源がたどれる鵜飼はやはり稲作とともに入ってきた。そして魚をとる手段として始まり、天皇家、貴族へのアユの貢ぎもの。そしてこの特権階級での遊技としての鵜飼から現在の観光鵜飼へと通じている。そんな表面的な歴史だけではなく常民による鵜をヒモでつないで歩きながら魚をとるもの。当然のことだけれど食料としての魚をとる鵜飼が日本各地で行われていたことなど、資料としても持っていたい本である。
中公新書 定価200円 1966年
『南総里見八犬伝』の作者・滝沢馬琴、義理の娘・路は詳細な日記をつけていたので有名である。それが江戸の町民、ご家人といった庶民の暮らしの貴重な資料でもある。この本の素晴らしいことはその膨大な日記内の実生活に関わる部分にスポットを当てたところである。滝沢馬琴は18世紀から19世紀の江戸文化の最盛期を生きた人であり、人気作家であった。当然庶民よりも贅沢な暮らしぶりではあったろうが、身分は町人、そしてご家人(身分の低い侍)である。その祝儀での魚(お祝いとしての)のやりとり、また病人食、歳時などポスイットが増えて困るほどである。魚貝類や歴史が好きなら必読書。資料性も高く、これを新書として出版してくれたことに感謝したい。
中公新書 780円 2003年
福島に魚貝類を見に行って、しまったと思ったのは本書を通読してから行くべきだったということ。歳時記や風土記と名が付くと、歴史や由緒、また祭などだけの本であり、実際の風土や生物利用、また町のことなどは皆目わからないものが多い。これらの本は、民俗学に興味のある人や、書いているご本人には興味があっても、他県者や「け」のことを知りたい向きにはなんの面白みもないのだ。その点で本書はそんなものとは対極にある。
また本書に素晴らしさは編集が見事なことだ。350ページほどのなかに盛り込まれた内容の濃さも歴史春秋社の編集あってこそだろう。
本書の最初に取り上げられているのが請戸港そばの酒蔵。この酒蔵の酒が港の船祝いに使われる。また松川浦の海苔(あおのり)養殖の変遷。久ノ浜での潜水漁、そして海の幸の詳細な解説。へたな観光案内より何倍も福島県の魅力を伝えてくれる。
これほどの文章をあっという間に読ませてくれる文章力にも感心させられた。福島に関心がなくても、読んで損をしない名著。
歴史春秋社 1420円 2000年
相模湾の生物にもっとも熟知されているのが葉山しおさい博物館の池田等先生だ。その長年の研究成果とも言える貴重な写真を多数使い、また懇切な検索法も細部の絵柄とともに語られているのが本書である。甲殻類の図鑑は少なく、また一般的な書はほとんどない。そんなときに相模湾と限定されてはいても、これだけ優れた図鑑を作られた意義は大きいだろう。
蟹類とあるが多数の異尾類も掲載されている。深海に生きる多彩な甲殻類の図版には少なからず感動するに違いない。
甲殻類の専門家はもとより、相模湾の自然や生物に興味がある人々にはかけがえのない1冊である。
手に入れたいと思う方は「葉山しおさい博物館」に問い合わせを
葉山しおさい博物館は
http://www.kanagawa-kankou.or.jp/area/shiset/hayama/130.htm
神保町『とかち書房』にて。
『たいめいけんよもやま噺』(茂出木心護 旺文社文庫 定価360円)1986年 古本で500円
『談志楽屋噺』(立川談志 文春文庫 定価400円)1990年 古本で200円
『風俗江戸東京物語』(岡本綺堂 河出文庫 定価930円) 2001年 古本で500円
4月29日
『貝に魅せられた一生』(東薫 築地書院)
★★★★
日本貝類学会の初代会長であり、我が国の貝類学を確立したのが黒田徳米。貝の収集、輸出を行っていた平瀬家(与一郎)のところに丁稚奉公から初めて、我が国に置いての貝類学が確立するまでを黒田徳米の生涯をとおして描いている。定価1400円
『日本貝類方言集』(川名興 未来社)
★★★★
貝の各地での呼び名から、民俗学的な「遊び」「信仰」、また食べ方まで膨大な事項を列記している。貝のことを調べるときには無くてはならないもの。定価15000円。古本屋では1万円前後
4月27日
『土佐の魚たち』(落合明 丸ノ内出版)
★★★★
1970年にでた本であるが古本屋などで比較的手に入りやすい。「土佐」とあるけれど文章は魚類全般であり、その資料的価値や、内容は深い。また高知大学時代の蒲原稔二との関わりや高知市御畳瀬での魚の採集など魚類学史の資料としても見逃せない
『かごしまの魚譜』(今井貞彦 筑摩書房)
★★
鹿児島で見られる魚たちを一般的に解説。文章も決して悪いわけではないのに得られる情報の価値は低い。もっと鹿児島ならではというものが欲しい。
4月25日(日)
『イルカいないか』(鳥羽山照男 マリン書房)
★★★★
著者は我が国では有数のイルカの飼育・調教者である。イルカを捕らえて、それを水族館で飼育するという課程を非常に読みやすい文章で読ませてくれる。資料的な価値も高い。980円
『美味しんぼの食卓』(雁屋哲 角川書店)
漫画「美味しんぼ」というのは若い世代にも、いい年をしたおとっつぁんにもやたら影響を与えている模様で、今やこの漫画の主人公のような「こだわり」をあちらこちらで見かける。ただ、どうにも好きになれないのは、あるときは「庶民主義」をかかげながら、やはり庶民ではまねのできない食生活ばかりであることだ。
4月23日(木)
『北のさかな物語』(門脇啓二 北海道新聞社)
★★★★
北海道の漁業で代表的なもの、サケやキチジ、ウバガイ(ほっき)、ホタテと実際に現地へ赴き現状を書き記している。土地土地の漁業の問題点、そこから派生する暮らしぶりなど読みやすい文章で書かれ、資料的価値もある。
『さかなの干物』(竹井 誠 岩崎書店)
★★★★
1967年の本であり、今のように添加物に対する悪いイメージのなかった時代に書かれてもの。味わいよりも衛生的であるとか「保ち」のことが大きな意味合いを持っていたことがわかる。またアジサバはもとより、ウミタナゴ、カワチブナまで多種多様な干物が取り上げられているのは資料的に貴重。神保町大雲堂で1200円
4月21日(水)
『海底動物の世界』(菊地泰二 中央公論社)
★★★★
海底動物というとベントスかなと思うが、もっと広く海洋生物のことが書かれている。何編かに分かれているのだが総て面白く有意義。特筆すべきは生物学的な用語や専門的な事柄も面白く読めて理解できる。古本屋、明倫館書店で700円。定価1200円
『割ばしの旅』(おおば比呂司 旺文社文庫)
1970年代というのはディスカバージャパンとかアンノン族をか国内旅行が盛んでした。当時はまた旅行記の出版も多かった。これは画家である著者が軽妙洒脱な文章と絵で綴ったもの。古本屋、とかち書房で200円
4月20日(火)
『児島湾』(同前峰雄 岡山文庫)
干拓がすすむ前、岡山県児島湾は深く入り込んだ広大な干潟であり、有明海同様に様々な干潟漁が行われていた。それを自信漁師である著者が詳細に綴る。今は絶滅の危機にあるイタボガキ(ぼたんがき)、有明海に残るスミノエガキ(だいなん)が児島湾に棲息していたなんて、今は幻そのもの。一級の資料。800円
『密約 物書同心居眠り紋蔵』(佐藤雅美 講談社文庫)
疲れたときに必要なのは佐藤雅美の小説です。ナルコレプシー(?)という阿佐田哲也が罹病したことで有名な奇病に犯された同心を主人公にしたシリーズ。突然眠ってしまうがために窓際族に追いやられた主人公がついつい事件に関わって手柄にならないのに解決してしまうというのがミソ。629円
4月19日(月)
『海の味』(山下欣二 八坂書房)
★★★★
わけ(イソギンチャク)から、エラコ(ゴカイ)、そしてイルカと水産珍味が目白押し。これを宮島水族館副館長の著者が取り寄せ、採取し自ら食べる。文章も明快でスルスル読める。1900円
『蟹』(酒井恒 講談社)
★★★★
学術書というよりも一般向けの読み物。1編1編が独立していて、どこから読んでも楽しめる。すなわち編集が行き届いて読みやすい。甲殻類(カニ)の入門書として必読のもの。1400円
『水産加工品総覧』(三輪勝利 光琳)
★★★★
乾製品の身欠きニシンから練り物、燻製にしおから、缶詰などなど辞書的に使える。非常に便利な本。
4月18日(日)
『カレイの裏とおもて』(大石慶一 恒星社厚生閣)
★★★★
カレイで一冊の本を作るというのはそれだけで大変なことであるが、内容の濃さもただものではない。味わいから生態、また形態的なことまでカレイのことで疑問が湧くとこの本を見る
『富山湾の魚たちは今』(富山県水産試験場 桂書房)
★★★
富山湾を代表する魚貝類の漁や資源、生態的なことまで短く簡略に解説して便利。ただし散漫な気がするのは編集の悪さからではないだろうか? 残念。
4月17日(土)
『たべもの紀行』全刊(読売新聞大阪社会部)
★★★★
これは私の中学・高校時代(昭和40年代後半からNp年半後)にもっとも楽しみにしていた読売新聞のコラム。古本屋で見つけてきては買っている。いったい何巻あるのかわからないまま、いまだに古本屋では目的のシリーズである。郷土料理というものにあこがれというか、興味を持ったのが、本シリーズの「鹿児島の酒ずし」のコラムからである。古本屋で300円前後。定価980円
4月16日(金)
『旬の魚河岸北の海から』(川嶋康男 中央公論社)
★★★
明快な文章、地元に密着したもので、実際に食べに行くために、買うための住所電話番号がのっているなど便利極まりない。1400円
『遠い「山びこ」』(佐野眞一 文春文庫)
★★★★
魚貝類に関する本を中心にということでは外れますが、この本には教えられることが多い。無着成恭と言う人はぼうずコンニャクが尊敬する永六輔の言葉から、また尊敬すべき人になったという、あまり褒められた経緯ではないのですが。この本を読んで、戦後の教育者としては真摯でしかも努力を惜しまなかったのだなと思いました。そして魚貝類のサイトの読書日記で、これを取り上げたのは、昭和30年くらいまでは直接的に「餓死」することはないまでも、やはり「飢えていたのだな」ということ。また山形県山元村(現上山市)ではほとんど魚貝類を食べることはなかった。もし食べるとしても塩鰯くらいであったということなど、中心となるものの脇に食を鑑みるヒントがあります。
4月15日
『江戸城』(村井益男 中公新書)
★★★★
江戸という地名の起源や、太田道灌の築城、徳川家康の御打入り、そして江戸期の変遷まで盛りだくさん。歴史書としては希薄であるが非常に便利なもの。540円
『貝の和名』(相模貝類同好会)
貝の和名を辞書形式で解説。日々なくてはならないものとなっている。アコヤガイの由来が知多半島の地名による、スガイのフタを酢に浸すとくるくる回ることで「酢貝」となったなど、読み物としても優れている。
『霞ヶ浦風土記』(佐賀純一・文、進・絵 常陽新聞社)
★★★★★
霞ヶ浦に住む人々からの聞き書きを、これはなんと表現したらいいのだろう。まるで物語を読むように、読まされれ、その世界に引き込まれてしまって…。そこで描かれる生活はときに悲惨ですらあるのに暖かい。霞ヶ浦の漁や魚貝類のことも詳しく語られている。
2800円
4月14日
『北の味たんけん』(本間浩昭 毎日新聞社)
★★★★
キタザコエビ(美味)、オホーツクホンヤドカリ(微妙に美味)などから茸、木の実まで一般的な食の本では取り上げない物を網羅している。見ていて楽しい上に資料的な価値もある。定価2000円
『にっぽん雑魚釣り紀行』(大崎紀夫 新門出版社)
★★★★
大崎紀夫は詩人である。彼が書いた本はすべて持っていたいと思う。日本各地を野宿いとわず旅をする。そして川や湖で雑魚(オイカワ、カワムツなど)を釣る。気持ちがふさいだときの特効薬。古本屋で1000円、定価1100円
『今ものこる江戸の老舗』(吉村武夫 河出文庫)
★★★
資料的価値はあるものの、読み物としては無味乾燥。古本で100円、定価460円
『蒲鉾太平記』(小林伸男 神奈川新聞社)
★★★
戦前戦後をとおして小田原に練り物(蒲鉾)製造という一大産業が興った軌跡を小説仕立てで「読ませる」。資料的価値もある。古本で500円、定価1200円
『東西味くらべ』(谷崎潤一郎 角川春樹事務所)
★★★
文庫本ほどの大きさのアンソロジーである。1915年の小説の抜粋から1960年のエッセイまでの多彩な食に関する文章が並ぶ。「鮨の立ち食い」、浅草海苔のことなど資料的な価値もある。古本で300円、定価1000円
4月13日
『江戸前の魚』(渡辺栄一 草思社)
★★★★★
魚貝類の本ではベスト1かも知れない。タイトル通りの江戸前でとれる魚貝類のこと。また千倉など外房でのマサバ漁、内房は勝山の捕鯨のことなどが、実に明快な文章で綴られる。資料性も高く、必読書だと思う。1200円
『反骨人生』(鈴木久仁直 ろん書房)
★★★★
名著「江戸前の魚」の著者、渡辺栄一氏の奇跡をまとめたもの。ここには千葉県をはじめ漁業や環境保護などの戦前戦後史がみることができる。1223円
『江戸食べもの誌』(興津要 旺文社文庫)
★★★
旺文社文庫というのは今から20年ほど前くらいまで(1980)は様々な分野や多彩な作者を要して魅力的であった。それが突然本屋から消えて旺文社が文庫本から撤退したときには落胆したものだ。本書もそのひとつ。ねぎま、鰻蒲焼、深川飯などときどき出しては読み返している。古本で200円
4月12月
『こちら東シナ海』(浜崎正幸 葦書房)
★★★★★
以西底引き網の漁師である著者が漁の模様、船上での暮らしなどを素晴らしい文章で綴る。何度も取り出して読んでるが、そのたびに夢中になるほど魅力的な本。以西底引き網に関しての資料性も高い。1957円
『にっぽん雑魚紀行 魚派列島』(甲斐崎圭 日本交通公社)
★★★★
1992年に出版されたもの。各地の港・漁を見てと素晴らしいルポルタージュ。難点は著者があまり魚貝類に詳しくないこと。この著者のルポにはしばしば魚名の間違いがある。1600円
4月11日
『東海の魚』(片岡照男 中日新聞本社)
★★★★★
主に伊勢湾でとれる魚貝類を紹介した本。片岡照男先生には一度だけお会いしたことがあるが、控えめなご性格なのか、東海の魚に関してあまりお聞きすることはできなかった。当時は鳥羽水族館の副館長でいらしたが、今はどうであろう。魚貝類というか、海産生物に関しては稀代の名著。魚貝類、海産生物を勉強するなら、この本からというのがおすすめ。ワクワクして読んでいたのが懐かしい。980円
『全日本「食の方言」地図』(野瀬泰申・日本経済新聞社)
★★
「あなたは天ぷらにソースをかけて食べますか?」(ぼうずコンニャクは四国生まれですが、ソースかけます)というのにひかれて買ってしまった。ただしネットの掲示板に来た情報を羅列しただけで、ちょっと内容に乏しい。1200円
4月10日
『山びとの記』(宇江敏勝・中公新書)
★★★★
戦前戦後を通じての紀伊半島の山岳部の人々の歴史や生き様などが、素晴らしい文章で描かれている。資料的な価値も高く、新書という廉価なもので読めるのはありがたいもの。480円
4月9日
『釧路のさかなと漁業』(桜井基博、山代昭三、川嶋昭二、尾身東美、阿部晃治・釧路叢書 釧路市 1972)
★★★★★
神保町の古本屋「とかち書房」で購入。3000円
今から、30年前の釧路の漁業、漁獲魚貝類が詳細にしかもわかりやすい編集で書かれている。特にエビ桁曳網のこと。それでとれるヒゴロモエビ、ホッコクアカエビ、トヤマエビなどのことが詳細に述べられていて目から鱗とでも言えそうな記述多し。
4月8日
『定本武江年表下』(今井金吾・筑摩文庫)
★★★★
江戸は神田の町名主、斎藤月岑が作成した。江戸庶民の年表。江戸の風俗、祭事など常備しておきたい本。1400円税別
2004年5月〜11月
本日記は毎日の読書日記(できるだけ魚貝類生物学のものを中心として)であるとともに参考文献の整理にともなう過去に読んだ本の書評も併記している。(敬称略)
11月16日(木)
『北九州の淡水魚 エビ・カニ』(北九州市立自然史・歴史博物館)
★★★★
北九州という地域性をしっかり説明されている優れた図鑑。ヌマエビなど希少な種の画像もきれいである。一般人としては優良な資料として持っていたいもの。700円(地域によっては料金支払い方法によって高くなる場合あり注意が必要。これに関しては堂博物館に改善を求めたい)
『「食べもの情報」ウソ・ホント』(高橋久仁子 講談社)
★★★
世の中の食に関する情報というのは千差万別。いかがわしいものが多すぎると感じる今日この頃ではあるが、これはそんな疑問に答えてくれること多々。900円
『大阪下町酒場列伝』(牧田清 ちくま文庫)
酒の肴を「あて」、しめ鯖が「きずし」とくるとそれだけでおいしい大阪が浮かんでくる。大阪の味の真の部分にあるのが庶民性だろう。そんな大阪の素の面をたっぷり見せてくれる。出てくる料理もうまそうだ。820円
9月16日(木)
『東大講座 すしねたの自然史』(大場秀章 坂本一男 NHK出版)
★★★
すし種として使われるそれぞれの生物のこと、歴史的な文献からの考証など非常に興味深い。多様な生物が生かされてすしの材料となっていることへの自然への優しさなど、これだけでも値段を考えれば価値のある一冊だと思う。ただし、ここには料理(食)としてのすし(これが未来を見せてくれる)が不在であるし、現状から遠くて古いすぎる部分もある。そのために著者の方たちに料理の感性、現状認識が欠如しているようにすら感じさせられる。実際、何カ所かの事項にはあまりに古くさくて「いつの話だ」という文章も散見する。これはたぶん個々の著者の問題ではなく編集がつたないためであるようだ。神保町三省堂1500円
『胡堂百話』(野村胡堂 中央公論新社)
だれでも知っている銭形平次の作者であるが、「あらえびす」としてクラシックレコードの収集家として我が国の音楽評論の嚆矢でもある。エッセイ集として端的に楽しめるのみならず胡堂と同郷・同世代の石川啄木、金田一京助のことなど歴史的にも興味深い。神保町三省堂で590円
9月14日(火)
『青森県 海の生物誌』(平井越朗 東奥日報)
★★★★
昭和30年代後半の本である。ホヤ、ミズクラゲからホタテなど青森県で見られる生き物を非常に丹念に描き見せてくれる。この手の生物学書としては名著のひとつ。神保町明倫館で1200円
『江の川物語 川漁師聞書』(黒田明憲著 中山辰巳ほか語り みずのわ書房)
★★★★★
広島県三次市から江津市までを流れる中国地方一の大河、江の川。この川で暮らし、漁をたつきとしてきた人々の歴史と現状を綴る。歴史民俗学的な資料としても優れているが、ふと我を中国地方の大河に誘ってくれる文章に敬服する。素晴らしい本である。神保町アクシス 2300円
9月09日(木)
『明治商売往来』(仲田定之助 ちくま学芸文庫)
同(続)の2冊
★★★★
日本橋生まれのデザイナーでありエッセイストの著者の日本橋を中心とした街や風俗をわかりやすい文章で綴られたもの。水産物の関わりでは日本橋にあった魚河岸のこと。江戸前のウナギのこと、浅草のりのことなど必読の書。1300円/続1500円
『夫婦善哉』(織田作之助 ちくま日本文学全集)
★★★
小説なのであるが、これは反面貴重な時代資料でもある。著者は大正2年(1913)生まれ、戦後、昭和22年(1947)に逝去しているのだが、大正から昭和にかけての大阪街の情景や風物を描かせると天下一品。出雲屋のまむし(鰻飯)のこと、金麩羅、トリガイのぬたなどまさに庶民がどのようなものを食べていたかまざまざと見せてくれる。1200円
9月01日(水)
『能義奥の民族』(畑伝之助 島根県文化財愛護協会)
★★★
昭和42年(1967年)に出たものであるが、能義の比田というのは現在(2004年9月1日)の能義郡広瀬町(安来市に併合される)の江戸の面影残る明治から昭和初期までの記録である。クジラの皮の利用法や、当地でも土用丑の日にウナギを食べる風習があったことなどがわかる。
『貝毒の謎』(野口玉雄・村上りつ子著 成山堂)
★★★★
貝毒というとまつぶ(エゾボラ)やヒメエゾボラのテトラミン。戦中の浜名湖でのアサリ毒のベネルピンによる大量死など食の上で知っておきたいことがいっぱいある。本書ではそれを専門的にすぎるものの網羅している。
『古里の鏡』(井上靖 中公文庫)
中央公論恐るべしというのは本書のような本を出しているからである。伊豆で幼年時代を送った井上靖の隠れた一面から、あまり本としてまとめることのできない小文まで楽しい一冊。
8月21日(土)
『細谷角次郎 貝類図絵』(池田等著 細谷角次郎絵 奥谷喬司監修 遠藤貝類博物館)
★★★★
神奈川県三浦の「細谷コレクション」が現在の貝の研究に尽くした功績は膨大である。その故細谷角次郎(1884〜1956)の残した図絵を葉山しおさい博物館の池田等先生の文章と解説でまとめたもの。現在ある写真画像の図鑑にはない同定のヒントが隠されている。また美術的にも貴重
『図説人体寄生虫学』(吉田幸雄 南山堂)
★★★★★
魚貝類を食べると言うことでさけてお通れないのが寄生虫のこと。これを図版と明確な文章でわかりやすく解説。9000円
7月13日(火)
『江戸っ子だってねえ 浪曲師廣澤虎造一代』(吉川潮 新潮文庫)
今や吉川潮というだけで手が伸びてしまう。昭和39年に死んだ廣澤虎造は私にとって「バカは死ななきゃなおらない」というフレーズだけの人。その一代記をあっという間に読ませられて、そして浪曲が聴きたくなる。590円
『伊予灘漁民誌』(渡部文也、高津富夫 えひめブックス)
★★★★
瀬戸内海の入り口であり、松山市から佐多岬まで長く続く海岸線の町々を漁とその地の歴史とでたどる。伊予から伊豆までメダイ釣りに遠征したことなど、発見が多々ある。952円
7月11日(日)
『三浦半島のタカラガイ(1)』(しおさい博物館)
三浦半島は軟体類、甲殻類など海産生物の我が国における事始めの地である。その地においていまだに活発に生き物の情報を発信しているのは「しおさい博物館」。本小冊子は貝を好きな人にぜひ持っていてもらいたいもの。なかなか同定が容易ではないタカラガイの初心者の入り口になる
7月01日(木)
『くじら取りの系譜 概説日本捕鯨史』(中園成生 長崎新聞新書)
★★★★★
捕鯨の歴史をこの一冊であるていど頭に入れることができる。クジラ学には入門書的なもの。年代史的に非常にわかりやすく解説してくれる。定価800円
『びっくりのんびり韓国暮らし』(長澤洋 草心社)
魚貝類の情報はほとんどないが、韓国の日常的なこと、すなわちいちばん見えてこないことが満載である。今年は韓国に魚貝を見に行きたいと思って読んだが、これまさに良書だ。
『日本ふーど記』(玉村豊男 中公文庫)
いわゆる食の本である。すなわち全国版の食べ歩き。資料的価値はほとんどなく、その軽快な文章を楽しむもの。佐久の鯉を食べてこれほど「うまそう」な文章を書ける人少なしだろう。
6月26日(土)
『日本産 魚類検索 第2版』(中坊徹次 東海大学出版会)
★★★★★
魚類を同定するに本図鑑なくしてはできない。例えば写真図版などで種を確定するのではなくアプローチの課程で使う。
定価2800円
『魚のシュン暦』(金田尚志 岩崎書店)
★★★
1958年に出版されたもので海の状況が大きく変わってしまった現在にあっては時代的な資料とも言えそう。魚の旬ということでは基本的な知識が得られる。神保町悠久堂で1200円
6月21日(月)
『醤油屋ばなし・海人がたり』(常世田令子 ろん書房)
★★★★
銚子の醤油醸造の歴史、マイワシ漁、イワガキ、利根川の川魚のことなど、丹念に聞き書きしたもの。このような聞き書きを本として手に入れられるのは千葉県の出版業の底力を感じるところ
『新 北のさかなたち』(水島敏博他 北海道新聞社)
★★★★
北海道の産業的な魚貝類の現状をわかりやすく網羅。いわば北海道の水産に対する総合辞典のようなもの。年中使っているもの
6月02日(水)
『東京繁昌記』(木村荘八 岩波文庫)
『墨(字がないので)東奇譚』の挿絵画家であり、生粋の東京町屋育ちの木村荘八のいわば東京(江戸)案内。資料性もある
『たべもの語源辞典』(清水桂一 東京堂出版)
★★★★
この辞典は説明文が明確であり、読み物としても優れている。例えば「時雨煮」や「磯部煮」など料理法なども必ずこの本を見直してから用語する。
5月29日
『ぽんこつ先生島をめぐる 離島の生活』(本木修次 雄山閣)
★★★
1963年に出た本。このぽんこつ先生というのは当時、都立赤羽中学の先生をしながらオートバイのライラック号にのり全国をめぐり、その地の現状をルポルタージュしていくもの。当時の離島生活の過酷なことや、後進性をまざまざと見せてくれる。また飛島のオキタナゴの刺身や奥尻島からエゾアワビの種を全国に送り出していたことなど
5月28日
『断腸亭日乗』(上下 永井荷風 岩波文庫)
大正6年から昭和34年までの、荷風の日常と思いを綴る日記である。その日常の在り方はなにものにも束縛されることなく自由に見えて、その自身の持つ強烈な美意識への拘泥は凄まじい。竹葉亭(ウナギ)、飯田屋(ドジョウ)などの老舗のこと、また大正昭和の食に関することなども興味深い。
神保町、とかち書房にて。750円
5月15日
『かご漁業』(日本水産学会編 恒星社厚生閣)
★★★★
日本の漁業においてかご漁というのは水揚げ量こそ少ないものの重要である。特に底引き網と比べて自然破壊も、対象外の生物の混獲も少ないなど資源を保全することからももっと普及してもいい。ズワイガニ、ケガニ、イバラガニモドキからタラバエビ科までこれ一冊で得るものは多い
5月12日
『酒に呑まれた頭』(吉田健一 ちくま文庫)
疲れたときに手にとってしまうのが吉田健一であるが文章は思った以上に難敵である。一見明朗に書かれた文章が読み込んでみると深い。
『釣りの風景』(伊藤桂一 六興出版)
本日は気のふさいだときの本2冊。伊藤桂一という人は端正なそしてどこか静謐な文章を書きながら、そこからにじみ出てくるものは勝手な思いこみながら凄惨である。野に雑魚を追いながら描く戦後の関東平野の風景が見えてくる
5月6日
『漁食の民』(長崎福三 北斗書房)
★★★
非常に多方面の話題をうまくまとめてある。例えば魚食の歴史、祭りと魚、魚の消費、また生産など。またそれだけに読んでいてとりとめがない。1500円
『日本漁具・漁法図説』(金田禎之 成山堂書店)
★★★★★
これは水産業を調べる上で必帯の本。例えば水産の他の本を読むときにも座右に欲しい。我が国のほとんど総ての漁業のやり方がわかりやすい文章、図で説明している。9800円。
5月5日
『茨城の海の生き物』(中庭正人他 茨城新聞社)
★★★★
各県で様々な図鑑が出されているのだけれど、これは楽しさにおいて出色のもの。海藻から甲殻類、はたまた魚類まで生息場所ごとに登場させてわかりやすく解説している
『水産無脊椎動物学』(椎野季雄 培風館)
★★★★
原生動物から棘皮動物、軟体動物、甲殻類と様々な生物のおおまかなところをわかりやすく並べ解説したもの。門外漢にはいわば図鑑の代わりとしても使える。
5月1日
『くじらの文化人類学』(ミルトン・M・R・フリーマン編著 海鳴社)
★★★★
1989年に出た本であり、これは捕鯨禁止が可決する前年にあたる。捕鯨の歴史、そして捕鯨の町の素顔、そして風習文化など様々な側面からアクセスする。宮城県鮎川のミンククジラ、千葉県和田のツチクジラ、和歌山県太地町のゴンドウクジラなど食にまつわることにも詳しく解説されていて、クジラ学入門書としては最適。
2005年07月17日(土)
『ことばの歳時記』(金田一春彦 新潮文庫) とかち書房で240円
★★★★
どうして買っていたのかわからないままに手にとり読み始めると止められなくなった。文章に味わいがある、読んでいてリズム感があるのか心地よい。しかも興味深い事柄が多々見つかるかすごい。例えば「関西では、煮ることをすべてタクという」それでおでんのことを「関東だき」と言う。サラガイ目の貝をヨメガサラというのは「嫁にはあまり食べさせないように浅い皿で食べさせる」というのを波部忠重から聞いたことなど魚貝類の分野だけでも価値高し。
『江戸時代の上方町人』(作道羊太郎 教育社歴史新書)靖国通り沿いの古本屋で100円)
★★★
角倉了以、淀屋辰五郎、住友家、伊東忠兵衛など大阪を代表する町人(豪商)を取り上げながらうま〜く大阪の歴史を語ってくれている。読み物としても完成度が高く、また資料としても持っておきたい。こんなの100円で売ってもいいのかな?
『小出楢重随筆集』(岩波文庫) 550円
明治の中ほど大阪は島之内(宗右衛門町の北側)に生まれた天才的な画家(これは私が思っていることで受け売りではありまえん)、小出楢重の随筆集である。生まれながらに食が細く、食べ物に記述はほとんどないが、大阪の街の香り、光を文章から感じられる。随筆として素晴らしい。
『すしの事典』(日比野光敏 東京堂出版) 2600円
★★★★★
ルーツから、ナレズシ、生ナレ、早ずし、江戸前握りのことなど歴史をわかりやすく要約。また「江戸前寿司を東京の郷土料理」と位置づけているのもすしの歴史を考える上で目から鱗のこと。この江戸前握りが関東大震災で職人が地方に分散したこと、また戦後食糧難のときの委託加工により、より全国化がすすんだなど、編集も優れているのだろうかズンズン頭に入ってくる。郷土ずしの資料もたっぷり納まってこの値段は「安い」
『びんぼう自慢』(古今亭志ん生 ちくま文庫) 古本 とかち書房 500円
なんども手放して、なんども買っている本。どうにも気が晴れないときに読むべし。ただし電車の中などで読むときには注意が必要。どうしてかは読めばわかる。
『日本 川紀行』(向一陽 講談社現代文庫) 980円
『離島を旅する』(向一陽 講談社現代文庫) 780円
★★★★
旅行記ではなくルポルタージュである。今そこにある川、離島の現状を実際に旅することでまざまざと見せてくれる。そこにあるのは楽園ではなく、ときに役人や政治家、土建会社や金のことしか考えない言うなれば現代の「鬼」の存在。救われるのは、そこでがんばっている人たちに誠実さだろうか。
『日本の味 醤油の歴史』(林玲子、天野雅敏 吉川弘文館) 1700円
★★★★
醤油以前のたまり、から和歌山県湯浅にもたらされた径山寺みそ→しょうゆ、そして現在のヤマサやキッコーマン醤油、はたまた薄口醤油、白醤油、最仕込み醤油など非常にわかりやすく書かれた本。魚貝類を食べることと醤油は切っても切らない関係にある。読んでおきたい本
『上方食談』(石毛直道 小学館) 1500円
★★★★
人文科学の泰斗であり、魚貝類の方面では魚醤やナレズシの研究でも有名すぎる石毛直道の少々柔らかい食の話。読んで面白いのも魅力だが資料性もある。すしの歴史やウナギの「半助」のこと、大阪ではあまりみそ汁を食べない。またみそ汁のことを「おつい」というなど、読む価値ありすぎ。
05月28日(土)
『寄せる波 返す波』(大槻一枝)
★★★★
昭和初期から戦後まで中国に置いてコンブ、ワカメなど海藻の養殖を手がけ、その礎を築いた大槻洋四郎とその家族の波瀾万丈の歴史を綴る。中国でコンブは海帯と書かれ、日本から輸入、非常に貴重で高価なものであった。そのために一般庶民には行き渡らずヨード不足に悩まされていた。そんな大陸にあって大槻洋四郎はコンブの養殖増殖を手がけ、今では中国をコンブの輸出国にまで成長させた嚆矢となった。この水産上重要な歴史的事実を綴る貴重な資料であり、読み物。
『街にクジラがいた風景』(菊地慶一 寿老社)
★★★
北海道網走は今でも捕鯨の街である。ただそれがシロナガスクジラ、ナガスクジラからミンククジラになり、そして今ではツチクジラをとっている。その大正から続く捕鯨の歴史を昭和32年に撮影された解体所の写真からたどっていく。捕鯨の資料としても、また読み物としても優れた本である。
『カツオとかつお節の同時代史』(藤林泰、宮内泰介編著 コモンズ)
★★★★★
鰹節の歴史の本は数あれど今、毎日使っているかつお節のことはほとんど語られていないのではないか? 例えば現在作られているかつお節などの需要が実は家庭に直接あるのではなく「麺つゆ」の材料としてのもの。またかつお節が出汁をとるためではなく削り節(パック)だったり。またこの増大している需要を満たしている今現在のカツオ漁のこと、またかつお節生産の現状など。近年の名著のひとつ。
『わが町大阪』(大谷晃一 編集工房ノア)
今、大阪に夢中である。もちろん水産物のことから入ったのだが、当然、魚類学や水産物だけを見ていては何もわかりはしない。我がことを言うのも気が引けるが魚貝類の専門書よりもこのような自伝的な本や歴史書、小説で図鑑内の言葉は出来上がっている。この自伝は大阪市内を点々と移り変わってきた著者がときにその街の雰囲気や特色を語り、また街が作り出す人生も綴られている。水産物に関する記述としては著者が朝日新聞の記者の時代、1950年前後に朝日新聞社が天満宮の氏子であったこと天神祭には折り箱が配られてなかには赤飯とともに大寅のかまぼこが入っていたという。
『大阪人』(月刊誌 大阪都市協会)
1970年代の月刊『太陽』、また『サライ』など雑誌にして資料性も高く、また書籍として素晴らしいものはあると思う。現在の『大阪人』などそのその最たるものである。特に大正昭和と生きてきた方たちにインタビューした「大阪ことばを語りつぐ」には魚貝類をに関しても見逃せない記述が見られる。例えば「うおじま」のこと、また近隣農家の方から飛び出す「半夏生とたこのざくざく」。毎月の新刊だけでなく過去のバックナンバーまで持っていたい雑誌。
『ふるさとの味』(週刊朝日編集部 雪華社 1964)
★★★★
近年、昔ながらの食物の概念を知るためにこのような書籍を集めている。本書は日本各地の言うなれば名物とでも言えそうなものを簡単に紹介するものだが、素晴らしいのは当時の値段が掲載されていることだ。例えば福井県の越前がに(ズワイガニ)は昭和30年代の後半で値段が高くなっていること、オスで1ぱい300円ほど、メスは30〜40円などとある。古本屋で100円で購入。
03月16日(水)
『韓国を食べる』(黒田勝弘 文春文庫)
韓流ブームだそうで、韓国の本は無数にある。ただし韓国ドラマにも観光地にもまったく興味がないので、見たところろくな本がないのだ。そんな中でこれは私的には白眉だ。食をテーマにすると見過ごされがちになる魚類自体のこと、B級グルメなど韓国で暮らしてこそわかる日常の食べ物のことまでずば抜けた文章で綴られている。619円
『海藻を観察しよう』(千葉県立中央博物館)
★★★★★
これは小冊子であり海の博物館(千葉県勝浦市)で無料で置かれているもの。海藻の資料は思った以上に少なく、よいものがないのだけれど、これは写真がきれいで、しかも解説がわかりやすい。磯に行くならぜひ持っていきたい本だ。
03月08日(日)
『海幸彦たちの四季 九州の伝統漁』(西日本新聞社)
★★
有明海のアナジャコ釣りからシイラ漬け漁など貴重な写真が満載されている。ただ残念なのは取材者に水産物や動物学の専門家が参加していないことだ。語られることはただ単に漁の現状であり、今そこに漁獲されているものにすら目が行き届いていない。非常に残念である。3500円
『鱧の皮』(上司小剣 岩波文庫)
今ではほとんど省みられることのない上司小剣ではあるが、この短編集は素晴らしいの一語につきる。特に「鱧の皮」の明治から大正期の大阪の情感豊かなこと。織田作とはひと味違った大阪庶民の暮らしぶりが忍ばれる。食の資料としても貴重。小宮山書店 350円
01月16日(日)
『日本の魚』(上野輝彌・坂本一男 中公新書)
★★★★
水族館や市場で漠然と魚を見ているときに、どうしても踏み込んでいけないのが分類学的な発想であろう。例えば図鑑の魚がどうしてこのような並べ方をされているのか? きっと何らかの意味合いがあるのだろうとは思うものの一般人には理解できないことの方が多い。そんな分類学者の考え方がわかりやすく、しかも面白い実例を示しながら語られている。ぜひ一読すべし。820円
『石版東京図絵』(永井龍男 中公文庫)
この本は長い間探していたもの。名著の誉れ高い。明治、大正、昭和の東京の庶民の暮らしぶりが共有できる。中公文庫。海坂書房1200円
『静岡いるか漁ひと物語』(和田雄剛 静岡郷土史研究会)
★★★★
静岡県東部はイルカを漁獲する、食用とする地域である。しかしこのイルカ漁の歴史はあまり調べることなく現在に至っている。そんななか貴重な小冊子である。(静岡市用宗1-12-6)
ぼうずコンニャクです。うまいもんや食の本、水産、生物、動物民俗などの本を乱読していますが、その本の書評、日記のページをブログに移動します。
これなら気が向いたときに画像つきで作成できますのでもっと再々本の日記を書いていけます。
ちなみにこれは、ぼうずコンニャクの備忘録でもありますので、書評的な発言に真剣に反応しないでくださいね。