これは『南方新社』の経営者でもあり、執筆者でもある向原祥隆さんからのいただきものである。いただきものを褒めるのもなんだが、読み始めるとやめられなくなる、そんな面白さがある。
ページをめくると様々な海辺の生き物(植物動物)が、とれた場所とともに登場してくる。著者が「海辺に行く=食べ物を漁りに行く」その日常的な様子、食べ方が見開き、方ページごとに語られているのだけど、知らない生き物も多く、食べたことのない生き物も数知れずある。
そのどれもがうまそうだし、ボクの子供の部分をずんずん刺激するのだ。2000円という値段安すぎないか? 困った本である。
『獲って食べる 浜辺を食べる図鑑』(向原祥隆)
南方新社
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ご一読ください!
埼玉を代表する魚としてペヘレイの刺身を食べてみていただきます。
個人的には埼玉で養殖しているペヘレイがいちばん味がいいと思っています。
めったに手に入らない魚なのでお暇でしたら参加してください。
魚市場での会に続きキッチンスタジオで懇親会を行います。
懇親会だけの参加も大歓迎です。
詳しくは掲示板をご覧ください。
まずはこの図鑑、扉に「釣り人のための」とある。それは本当に「釣り人のためなのか?」、いやそんなに単純ではないらしい。
先週のこと沼津魚市場にナガユメタチモドキが揚がった。それを老練な仲買人である。菊地利雄さんが特急便で送ってくれた。
『遊遊さかな大図鑑』を監修した、中坊徹次さん編の『日本産 魚類検索 全種の同定』でやっとナガユメタチモドキに辿り着き
「菊地さん、種類がわかりました」
と言うと途端に
「ナガユメタチモドキっていうんでしょ。私も調べられました。魚大図鑑でしたっけ、すぐわかりましたよ。ハハハ......」
なんだかうれしそうなのだ。ということで沼津魚市場では「仲買のための」となっている事実を書いておきたい。
また別に魚のプロや釣り人でなくてもこれほど便利な魚類図鑑は少ないだろう。今、魚のことを知りたい人、魚初心者はけっして「釣り人のための」の文字を気にしないように。
その内、我が家でも本図鑑を開ける機会が多くなってきた。例えばニジョウサバ、ヤマブキハタなど、検索図鑑の図版では色合いがつかめないときには、そく『遊遊さかな大図鑑』の登場となる。なかにはイスズミ科、メジナ科など検索の難しい魚種に関して画像での検索もついているのが凄い。間違いなくこの2科に関しては以後どれだけお世話になるかわかったもんじゃない。まったく小西さんに「ありがとうね。ありがとうね」とお礼を申し上げながら検索することにもなりそうだ。
さてさて、その検索も出来る、写真も美しい図鑑であるが、ところどころに小西英人さんの遊びが見つかる。第一、ハードカバーを開いて最初に登場するのがデカイヒラマサでもカッポレでもなくハオコゼというのが憎い。次にはオオスジイシモチだ。ともに釣り人が釣りたくない魚の5本の指には入るものたち。「釣り人のための」だけど、にくったらしいのや、困った魚も邪険にはしないよ。もしくは「釣り人よ、外道もおんなし(同じ)魚じゃーねーか」なんてせりふがフーテンの寅さんの言い回しで聞こえてくる。
いかん、長文になりすぎてしまう。結論としては検索のためにも、また写真を楽しむ上でも、当然のごとく文章まで楽しめるので素晴らしい図鑑であるのだ。
本の満足度
満足度★★★★☆
満点ではない理由はときどき改訂、また新しく作り直して欲しいため
詳しいことは『WEB魚図鑑』へ
http://fishing-forum.org/zukan/index.htm
本書は定価10000円
鳥羽水族館もしくは樋口滋雄さんにメールにて注文
メール
shigeo_higuchi@meiji.co.jp
初めてカレーライスを食べたときのことは今でも覚えている。それは自宅ではなく、子守さん(ボクは母親が病弱だったので)の家だった。たぶん肉と野菜を炒め、水を入れて水溶きの小麦粉とカレー粉を溶くというもっとも基本的な作り方のカレー。今でもその黄色いルーとご飯のコントラストが目に浮かぶ。その衝撃は辛さからくるものだった。あまりにも辛くて、そのときに一緒に食べた友達(今でも友達だ)とともにお砂糖をなめて、押入に隠れ込んだのを覚えている。
そのカレーはイギリスの初代ベンガル総督が1770年に本国に持ち帰ったことから、インドでのただの「料理」から「カレー」へと名を変える。ちなみに「カレー」というのはインドでは特別にこれといった料理を差すのではないという。それから初めてカレー粉を製造したC&B。それが明治維新とともに我が国に到来。カレーという料理も明治初期から作られ始めるのだ。
その初めてのカレーを作り出すまでに玉ねぎ、小麦粉、西洋ニンジン(今われわれが普通に食べているもの)などを国内で生産する。またカレー粉の国産での製造などかずかずのカレー史のステージがあることがわかる。
またもっとも興味深いのはカレーがどうして我が国にこれだけ早く受け入れられたのだろうか? という点。これにはそれまでの食事がご飯の他に出汁をとる。お菜(おかず)を作る。漬物を漬け切るなどの幾多の作業を必要としていたこと。これに対してカレーはひとつの鍋で炒める、煮るなどが完了する。また出来上がってもご飯にのせるだけなど、従来の食事と比べて非常に簡便であった。それで急速に広まったのであるというのも食の歴史を考える上でも興味深い。
そしてその広がりのなかで様々な材料がカレーに使われてくる。ほっき(ウバガイ)、ホタテガイ、マスにイワシなど、獣肉だけでなく島国日本ならではの材料が使われるのだ。
他にも新宿中村屋の「インドカレー」、阪急百貨店の大食堂の「カレーライス」、カレーパンや「カレーと福神漬け」の話など盛りだくさんすぎて、しかも読んで面白過ぎるので、ある意味こまった本でもある。
本の満足度。5★満点で
★★★★☆
中学、高校と日本史で習うのはせいぜい明治期まで、意外に知らない領域が昭和の歴史なのだ。平安、奈良などと違い、自分自身が生きて、そしてまだまだ庶民の生活に関する実体験や資料が数知れず、当たり前だが残っている。その昭和をボクは知らないのだ。
本書の著者である白井貞(敬称略とさせてもらう)は大正12年生まれである。この1923年は関東大震災の年。そして昭和元年には著者の物心つく時期とも重なるのである。昭和16年、大妻技芸学校(多分今の大妻女子大)家政学部を卒業して、労研(労働科学研究所 この研究所で思い浮かぶのが“労研饅頭”だけというのが恥ずかしい)に就職。戦中戦後の食糧難のとき、また復興期、そして現代にわたって栄養調査をし、そして管理栄養士として常に一線で活躍されてきた。
その企業での栄養士としての献立や、また当時の食糧事情などが綿密に書かれている。面白いのは戦中の外食券食堂、雑炊食堂などの現在の大衆食堂の起源ともいうべきものの調査。そこで食べられていた料理の材料。また新潟の企業での献立や、また二本木という土地での名物が「どじょうの蒲焼き」であったこと。また当時のクジラの利用なども非常に興味深いのである。
さて魚貝類を調べているのでついつい興味のあるところだけを書き上げたが、ここには昭和を、またいちばん苦しい時代を生き抜いた女性の歴史が見えてくる。これだけでも読む価値大。
この本の満足度。5★満点で
★★★★
季刊誌と言うことで雑誌の形はとっているが充分に単行本一冊の価値がある。“里海”という概念は「海(自然)はけっして漁師だけのものでも国や自治体だけのものでもなく、そこで暮らす、また多くの人と共有守っていく場所である」とする原則をしっかり見据えて作られた本である。
ここに登場するのは漁師の側から我々一般人にも“里海”に来ませんかという運動をしている『盤州里海の会』。ここでは木更津の現役漁師が「海で生きると言うこと」、「また海を守ると言うこと」、そして「今の東京湾の現状」をけっして現在を否定することなく多くの人に知らしめようとしている。例えば会の目下の目標である「アサクサノリの復活」にかける意気込み、また小櫃川河口に広がる盤州の現状。その活動が非常に丹念にこの雑誌には綴られているのである。
別項の多摩川河口でのアサクサノリの発見者菊地則雄先生のページもとても興味深いものだ。そこに明治42年刊、岡本金太郎の稀覯本『浅草海苔』などを連載載録している。この価値は計り知れないだろう。
また、日本各地での海を巡る開発問題にも特集その2で多くの紙面が割かれている。ここにある諸問題は我々一般人にも避けては通れないことであるのは、この特集でまざまざと見えてくる。
さて、この内容濃いページをめくった最後、グラビアページに懐かしい顔がある。利根川河口小見川町(現香取市)の『うなせん』菅谷敏夫さんである。菅谷さんは利根川の下りウナギを名人芸で焼き上げる千葉県でも屈指のうなぎ職人である。その「ぼっか」と言われる大ウナギの味わいは天下一品。また冬季の野鴨など利根川はいまだに美味の宝庫であるのがこのページからもわかるはずである。
まな出版企画
http://www.manabook.jp/
『盤州里海の会』
http://www.satoumi.net/
この本の満足度、また次回を買いたいと思ってしまったので
★★★★
と満点に近い