過去の日記

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2005年07月17日(土)
『ことばの歳時記』(金田一春彦 新潮文庫) とかち書房で240円
★★★★
どうして買っていたのかわからないままに手にとり読み始めると止められなくなった。文章に味わいがある、読んでいてリズム感があるのか心地よい。しかも興味深い事柄が多々見つかるかすごい。例えば「関西では、煮ることをすべてタクという」それでおでんのことを「関東だき」と言う。サラガイ目の貝をヨメガサラというのは「嫁にはあまり食べさせないように浅い皿で食べさせる」というのを波部忠重から聞いたことなど魚貝類の分野だけでも価値高し。
『江戸時代の上方町人』(作道羊太郎 教育社歴史新書)靖国通り沿いの古本屋で100円)
★★★
角倉了以、淀屋辰五郎、住友家、伊東忠兵衛など大阪を代表する町人(豪商)を取り上げながらうま〜く大阪の歴史を語ってくれている。読み物としても完成度が高く、また資料としても持っておきたい。こんなの100円で売ってもいいのかな?
『小出楢重随筆集』(岩波文庫) 550円
明治の中ほど大阪は島之内(宗右衛門町の北側)に生まれた天才的な画家(これは私が思っていることで受け売りではありまえん)、小出楢重の随筆集である。生まれながらに食が細く、食べ物に記述はほとんどないが、大阪の街の香り、光を文章から感じられる。随筆として素晴らしい。
『すしの事典』(日比野光敏 東京堂出版) 2600円
★★★★★
ルーツから、ナレズシ、生ナレ、早ずし、江戸前握りのことなど歴史をわかりやすく要約。また「江戸前寿司を東京の郷土料理」と位置づけているのもすしの歴史を考える上で目から鱗のこと。この江戸前握りが関東大震災で職人が地方に分散したこと、また戦後食糧難のときの委託加工により、より全国化がすすんだなど、編集も優れているのだろうかズンズン頭に入ってくる。郷土ずしの資料もたっぷり納まってこの値段は「安い」
『びんぼう自慢』(古今亭志ん生 ちくま文庫) 古本 とかち書房 500円
なんども手放して、なんども買っている本。どうにも気が晴れないときに読むべし。ただし電車の中などで読むときには注意が必要。どうしてかは読めばわかる。
『日本 川紀行』(向一陽 講談社現代文庫) 980円
『離島を旅する』(向一陽 講談社現代文庫) 780円
★★★★
旅行記ではなくルポルタージュである。今そこにある川、離島の現状を実際に旅することでまざまざと見せてくれる。そこにあるのは楽園ではなく、ときに役人や政治家、土建会社や金のことしか考えない言うなれば現代の「鬼」の存在。救われるのは、そこでがんばっている人たちに誠実さだろうか。
『日本の味 醤油の歴史』(林玲子、天野雅敏 吉川弘文館) 1700円
★★★★
醤油以前のたまり、から和歌山県湯浅にもたらされた径山寺みそ→しょうゆ、そして現在のヤマサやキッコーマン醤油、はたまた薄口醤油、白醤油、最仕込み醤油など非常にわかりやすく書かれた本。魚貝類を食べることと醤油は切っても切らない関係にある。読んでおきたい本
『上方食談』(石毛直道 小学館) 1500円
★★★★
人文科学の泰斗であり、魚貝類の方面では魚醤やナレズシの研究でも有名すぎる石毛直道の少々柔らかい食の話。読んで面白いのも魅力だが資料性もある。すしの歴史やウナギの「半助」のこと、大阪ではあまりみそ汁を食べない。またみそ汁のことを「おつい」というなど、読む価値ありすぎ。
05月28日(土)
『寄せる波 返す波』(大槻一枝)
★★★★
昭和初期から戦後まで中国に置いてコンブ、ワカメなど海藻の養殖を手がけ、その礎を築いた大槻洋四郎とその家族の波瀾万丈の歴史を綴る。中国でコンブは海帯と書かれ、日本から輸入、非常に貴重で高価なものであった。そのために一般庶民には行き渡らずヨード不足に悩まされていた。そんな大陸にあって大槻洋四郎はコンブの養殖増殖を手がけ、今では中国をコンブの輸出国にまで成長させた嚆矢となった。この水産上重要な歴史的事実を綴る貴重な資料であり、読み物。
『街にクジラがいた風景』(菊地慶一 寿老社)
★★★
 北海道網走は今でも捕鯨の街である。ただそれがシロナガスクジラ、ナガスクジラからミンククジラになり、そして今ではツチクジラをとっている。その大正から続く捕鯨の歴史を昭和32年に撮影された解体所の写真からたどっていく。捕鯨の資料としても、また読み物としても優れた本である。
『カツオとかつお節の同時代史』(藤林泰、宮内泰介編著 コモンズ)
★★★★★
鰹節の歴史の本は数あれど今、毎日使っているかつお節のことはほとんど語られていないのではないか? 例えば現在作られているかつお節などの需要が実は家庭に直接あるのではなく「麺つゆ」の材料としてのもの。またかつお節が出汁をとるためではなく削り節(パック)だったり。またこの増大している需要を満たしている今現在のカツオ漁のこと、またかつお節生産の現状など。近年の名著のひとつ。
『わが町大阪』(大谷晃一 編集工房ノア)
今、大阪に夢中である。もちろん水産物のことから入ったのだが、当然、魚類学や水産物だけを見ていては何もわかりはしない。我がことを言うのも気が引けるが魚貝類の専門書よりもこのような自伝的な本や歴史書、小説で図鑑内の言葉は出来上がっている。この自伝は大阪市内を点々と移り変わってきた著者がときにその街の雰囲気や特色を語り、また街が作り出す人生も綴られている。水産物に関する記述としては著者が朝日新聞の記者の時代、1950年前後に朝日新聞社が天満宮の氏子であったこと天神祭には折り箱が配られてなかには赤飯とともに大寅のかまぼこが入っていたという。
『大阪人』(月刊誌 大阪都市協会)
1970年代の月刊『太陽』、また『サライ』など雑誌にして資料性も高く、また書籍として素晴らしいものはあると思う。現在の『大阪人』などそのその最たるものである。特に大正昭和と生きてきた方たちにインタビューした「大阪ことばを語りつぐ」には魚貝類をに関しても見逃せない記述が見られる。例えば「うおじま」のこと、また近隣農家の方から飛び出す「半夏生とたこのざくざく」。毎月の新刊だけでなく過去のバックナンバーまで持っていたい雑誌。
『ふるさとの味』(週刊朝日編集部 雪華社 1964)
★★★★
近年、昔ながらの食物の概念を知るためにこのような書籍を集めている。本書は日本各地の言うなれば名物とでも言えそうなものを簡単に紹介するものだが、素晴らしいのは当時の値段が掲載されていることだ。例えば福井県の越前がに(ズワイガニ)は昭和30年代の後半で値段が高くなっていること、オスで1ぱい300円ほど、メスは30〜40円などとある。古本屋で100円で購入。
03月16日(水)
『韓国を食べる』(黒田勝弘 文春文庫)
韓流ブームだそうで、韓国の本は無数にある。ただし韓国ドラマにも観光地にもまったく興味がないので、見たところろくな本がないのだ。そんな中でこれは私的には白眉だ。食をテーマにすると見過ごされがちになる魚類自体のこと、B級グルメなど韓国で暮らしてこそわかる日常の食べ物のことまでずば抜けた文章で綴られている。619円
『海藻を観察しよう』(千葉県立中央博物館)
★★★★★
これは小冊子であり海の博物館(千葉県勝浦市)で無料で置かれているもの。海藻の資料は思った以上に少なく、よいものがないのだけれど、これは写真がきれいで、しかも解説がわかりやすい。磯に行くならぜひ持っていきたい本だ。
03月08日(日)
『海幸彦たちの四季 九州の伝統漁』(西日本新聞社)
★★
有明海のアナジャコ釣りからシイラ漬け漁など貴重な写真が満載されている。ただ残念なのは取材者に水産物や動物学の専門家が参加していないことだ。語られることはただ単に漁の現状であり、今そこに漁獲されているものにすら目が行き届いていない。非常に残念である。3500円
『鱧の皮』(上司小剣 岩波文庫)
今ではほとんど省みられることのない上司小剣ではあるが、この短編集は素晴らしいの一語につきる。特に「鱧の皮」の明治から大正期の大阪の情感豊かなこと。織田作とはひと味違った大阪庶民の暮らしぶりが忍ばれる。食の資料としても貴重。小宮山書店 350円
01月16日(日)
『日本の魚』(上野輝彌・坂本一男 中公新書)
★★★★
水族館や市場で漠然と魚を見ているときに、どうしても踏み込んでいけないのが分類学的な発想であろう。例えば図鑑の魚がどうしてこのような並べ方をされているのか? きっと何らかの意味合いがあるのだろうとは思うものの一般人には理解できないことの方が多い。そんな分類学者の考え方がわかりやすく、しかも面白い実例を示しながら語られている。ぜひ一読すべし。820円
『石版東京図絵』(永井龍男 中公文庫)
この本は長い間探していたもの。名著の誉れ高い。明治、大正、昭和の東京の庶民の暮らしぶりが共有できる。中公文庫。海坂書房1200円
『静岡いるか漁ひと物語』(和田雄剛 静岡郷土史研究会)
★★★★
静岡県東部はイルカを漁獲する、食用とする地域である。しかしこのイルカ漁の歴史はあまり調べることなく現在に至っている。そんななか貴重な小冊子である。(静岡市用宗1-12-6)


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郷土料理「ごへいもち」や「ゆべし」の産地と漢字表記を知っている方は、教えてください(^^;ゆべしは柚餅子、だったかな…… - 13:01 2004年1月31日 (UTC):ごへいもちは御幣餅です。飛騨高山でよく見掛けますが、木曽にもあるようです。 13:05 2004年1月31日 (UTC)::信. 続きを読む

どうせまたそのうち行くんだろうなぁ??と思ってましたが、やはり行きましたね。小泉首 続きを読む

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このページは、管理人が2005年10月 2日 17:15に書いたブログ記事です。

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