2006年6月アーカイブ

 鈴鹿川の魚の呼び名を調査した本書、また中ノ川の調査を表した『中ノ川における魚の昔の呼び名』ともにぜひ持っておきたいものである。河川での魚貝類の呼び名は年々忘れ去られていく、これは言うなれば地域の財産のようなものであるのに、それを認識している人は少なく、また残そうとする人は希有である。こういった現代の風潮からすると、鈴鹿川、中ノ川などの「魚の昔の呼び名」がこのような形で残るのは、私のように魚貝類のことを調べているものにもありがたいことである。
 さて、本書の優れているのは種ごとの生息域など詳細な報告と、その調査票が多くそのまま掲載されていることにある。地域で生物の呼び名を調べていても、その種のはっきりしない例が多いのであるが、本書は画像も含めて非常に明解である。
 また興味深いのは「はよ」「はい」「はや」というのはオイカワ、ウグイ、カワムツに使われるということが音をふまえて列挙されている。シマドジョウを「しまどんじょ」「あみどじょう」など形態的なものからくるものと「かわどじょう」など生態的なところから来るものが併用されているというのがわかる。またオイカワやカワムツなどの婚姻色のでたときの呼び名など、我が故郷でのこと合わせても貴重な資料である。
 最後に「水辺づくりの会 鈴鹿川のうお座」が展開する地域運動も地道で素晴らしいものに思える。出来れば、ぼうずコンニャクも参加したい。

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水辺づくりの会 鈴鹿川のうお座
http://www.ztv.ne.jp/web/cherry/index.html

 我が国で市販されている動物図鑑といえば魚類、甲虫、ほ乳類、軟体類など様々各種揃っているように思えるが、いざ海辺で出合った生き物のことを調べようと思うと、その多様性のためにぜんぜん種名までたどり着けないものが多すぎるのに気づく。フジツボ、カメノテなどの蔓脚類もそんなもののひとつ。
 この『フジツボ類の最新学』はその意味で非常にありがたい本である。蔓脚類の基礎知識から最新の分類まで比較的わかりやすく読めるし、また一般人にも理解できる。
 ただ残念なのは6800円という高価なものにするなら図鑑としての機能を一カ所にまとめて欲しかったこと。最初のグラビアに写真が後半に検索がのっているけれどこれはあまりに不便である。今の印刷技術からすると、もっと便利なページ立てが、この値段内でできたと思う。

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恒星社厚生閣 6800円

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