古書でしか手に入らない本だと思うが、魚のイロハをおぼえるには最適なもの。
安田富士郎には魚関係の本が多く、得るところが大。
おすすめ度 ★★★★ ぜひ買ってほしいもの
くりさん、栗原伸夫さんとは一度だけお会いしたことがある。外見からはいかにも紳士然としてボクのようながさつなヤカラには近寄りがたい雰囲気も感じられたが、この本を読んでこの誤解が氷解した。この雑学とはにかみを含み世に出された100扁の章に、ただの蘊蓄ではなく、むしろ人生を語るような深みを感じたのだ。
この100扁の文章には文献からだけではけっして生み出せない。そこに栗原さんの水産学人生が深く反映しているというわけだ。これを「雑学」とするのは著者の持つ心憎いアイロニーであることは間違いない。
この100扁をすべてあげることは出来ないのだが、そのいかにも栗原さんならではの章は「十和田湖のヒメマス」ではないかと思う。この書き出しに彼の伝説の人を「和井内さん」と書きだしている。なぜ「和井内さん」と「さん」がつくのかは読むほどに判明する。この快挙を成し遂げた十和田湖での事業を東京水産大学(現海洋大学)の学生であった著者は今で言うアルバイトとはいえ実見しているのだ。この時代の内水面での養殖の意味合いも著者は身をもって知っているわけで、当然伝説の和井内貞行に会っていなくても無意識に「さん」がついてしまう。
この水産学のコラムの良さはそれだけではない。「芦ノ湖のブラックバス」、「第5福竜丸の生涯」、ついつい知ってるつもりで、曖昧な史実、項目が的確に抑えられている。この分厚い本は我がかたわらにいつも置いておきたいものである。
この本のボクの満足度は★★★★と満点にちかい。
タイトルを見てすぐに買ってしまった。とても魅力的な本である。沈性卵、浮性卵などマダラ、スケトウダラで違いがあることや、食感にそれぞれ違うんだなと漠然と考えてはいたが、本書をして頭の中の整理がついた気分である。
本書はまず食品としての卵から章が始まる。これが非常にわかりやすい。例えば、「たらこ」はタラの子ではなくスケトウダラの子というのは当たり前でも浮性卵の方が軟らかく、これが食味に影響していること。こんな出だしは門外漢にはありがたい。そして卵の表面の顕微鏡画像から見えてくる複雑な模様、これが時に科の段階で共通したり、また科も目も関連のない魚で似通っていたり、これが生息域や産卵方法で収斂したものである加工性も面白いし、卵を考える上で多くのヒントを与えてくれる。
ちょっと残念なことはページ数が少ないことだ。出来たら上下2巻にして各章をもう少し掘り下げてもらいたかった。
成山堂 ベルソーブックス017 1600円