歴史・風土・民俗学: 2007年1月アーカイブ

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 道修町(どしょうまち)と言えば薬の町。薬を商う商店が軒を並べ、そこから武田製薬、田辺製薬、塩野義製薬などが今に残る。そこにあった様々な人生が非常にテンポの良い語り口で述べられる。またそこでは古い大阪、商家の暮らし、文化が戦後まで残されていたのだ。本書はそんな薬の町の歴史と暮らしを道修町を生地とする著者が愛情をこめて描いている。
 帰郷するときに立ち寄る大阪難波(南海電車の始発)、中央市場のある野田、そして鶴橋などは大阪でも馴染みのある場所。そんななかでどうしても近寄りがたいのが船場、道修町あたりである。今では完全にオフィス街であり、なんだか硬質なイメージを受ける。その近寄りがたさを取り去ってくれたのがこの本である。
 大阪では魚市場、海産物を取り扱うところを雑喉場と呼ぶ。道修町の東側、天満に古くからの魚市場があったこと。また石山本願寺の支配から豊臣秀吉の時代になって最初に雑喉場となったのが靫。これは道修町の西に当たる。その真ん中にあった町が雑喉場の移転とともに薬の町に変貌していく。後には薬を扱うに「道修町に店を持つ」のが最大の立身とされるようになるのである。
 考えてみると江戸時代には大阪への人の流れを規制していたのである。そのために地方から出てくるととりあえず居を構えるのが野田、または福島あたりであったという。そこから堂島川、土佐堀川をわたり船場に至る立身というドラマが明治期まであった。ボクの子供の頃に人気があったのが「番頭はんと丁稚どん」。この世界そのままが道修町にはあったのである。またその商家の暮らしに船場汁、魚島などの食文化があったわけで、このあたりを調べるにも貴重な手がかりとなる。
 この本、水産物を調べるにあまり関わりがあるとは思えない。ところが最近、魚の利用や価値観を考えるに街の歴史がいかに重要かというのに気づいたのだ。また本書は読み物としての面白さも兼ね備えている。たぶん読み始めるとついつい止まらなくなるはずだ。
この本のボクの満足度は★★★★。面白い!

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