福島に行くようになって、まず驚いたのはその広さである。北海道、岩手に次ぐ面積だとは知っていても、始めてクルマで回って見て、そのひとつひとつの市町村の大きさにも目を見張る。しかもその見て歩いたのが福島県でも「浜通」と呼ばれる海岸線に近い地域だけなのだ。ここから内陸に向かって「中通」、そして「会津」と、またそれぞれ独特な風土をもつ地区が存在している。それを200ページと少しで語ろうとするのは土台無理がある。
サケのこと、魚を取り扱う業者を「五十集(いさば)屋」ということなど、魚貝類に関しても興味深い記述は見いだせる。ただ、編集の問題であると思うのだけれど、民俗学的に風習にともなう食を語る部分、風土を語る部分、また料理名、料理自体を語る部分をしっかり分けてもらいたかった。また、その総てが舌足らずの状況にある。
福島の食を語るならできれば3つの地方ごとに3巻に分ける。また食材風土だけは別巻にするべきかも知れない。農文協の『聞き書き 福島の食事』でも同様の不満がある。これ大変だろうな。
歴史春秋社 1200円