『とんかつの誕生』(岡田哲 講談社メチエ)1600円

0

tonkatu0612.jpg

 タイトルから「とんかつ」の本であると思うのは早計である。幕末から西欧の文化が洪水のごとく押し寄せてきて、それを短時間で受け入れるというところに幾多の多方面での混乱とドラマが生まれる。明治天皇までかり出しての肉食の普及運動。ウスターソース、またパン、またキャベツなど「とんかつ」に欠かせぬ素材の国産化、また改良。そこで明らかに食の多様化が生まれるのだが、それが簡潔にかわりやすく綴られている。その先に「とんかつ」があるのだ。すなわちここには西洋と和が作り出す洋食の歴史が語られている。
 またボクなど肥満体になり、高血圧で危険な身になりながらもやめられない「とんかつ」の誕生が、西欧と和の混沌の中で生み出されているという結論がでてくる。
 明治28年東京銀座の「煉瓦亭」が生み出した豚肉のカツレツから、昭和4年の今まさにあるような「とんかつ」を生み出した上野の「ポンチ軒」(この店名に小津安二郎の世界がある)。そこにいたる明治以来の食の混合を一枚のロースカツに感じながら、ボクなどより肥満体への道を進むのである。
 ボクの本の満足度は★★★★と満点に近い。


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://blog.zukan-bouz.com/mt-app/mt/mt-tb.cgi/2597

コメントする

このブログ記事について

このページは、管理人が2007年1月 4日 09:07に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「『馬琴の食卓』鈴木晋一(平凡社文庫)770円」です。

次のブログ記事は「『くりさんの水産雑学コラム100』栗原伸夫(まな出版企画・れんが書房社)3000円」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。