2005年10月 6日アーカイブ

 福島に魚貝類を見に行って、しまったと思ったのは本書を通読してから行くべきだったということ。歳時記や風土記と名が付くと、歴史や由緒、また祭などだけの本であり、実際の風土や生物利用、また町のことなどは皆目わからないものが多い。これらの本は、民俗学に興味のある人や、書いているご本人には興味があっても、他県者や「け」のことを知りたい向きにはなんの面白みもないのだ。その点で本書はそんなものとは対極にある。
 また本書に素晴らしさは編集が見事なことだ。350ページほどのなかに盛り込まれた内容の濃さも歴史春秋社の編集あってこそだろう。
 本書の最初に取り上げられているのが請戸港そばの酒蔵。この酒蔵の酒が港の船祝いに使われる。また松川浦の海苔(あおのり)養殖の変遷。久ノ浜での潜水漁、そして海の幸の詳細な解説。へたな観光案内より何倍も福島県の魅力を伝えてくれる。
 これほどの文章をあっという間に読ませてくれる文章力にも感心させられた。福島に関心がなくても、読んで損をしない名著。

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歴史春秋社 1420円 2000年

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